さまざまな身体の不調が生じたとき、いったい何の病気なのかもわからない段階で、適切な問診と身体診察を行ったうえで、問題解決の方針をたてる。これが総合診療(プライマリケア)の本当の中身といえます。プライマリケア医という言葉は単にかかりつけ医とか開業医の意味で使われることも多いかと思いますが、真の意味での一次診療:初期診療で求められる水準を満たすには、多岐にわたる疾病についての幅広い知識とそれに裏打ちされた問診を選ぶスキル、身体診察の技術、その後の検査を選択し結果を解釈できる臨床推論能力、等が必要と考えます。
それと同時に、いま生じている問題はある程度時間をかけて解決法をさぐるので良いのか、あるいは即座に処置が必要なのかどうかを正しく判断することも求められます。そのためには救急医療の知識や急を要する病態・経過によって急変する可能性がある病態についての理解が必要です。
また、ここでは「総合内科」ではなく「総合診療」と表記していますが、内科医が初療する身体の不調のなかには内科ではなく他科のカバーする範囲の病態も少なからず存在します。その場合でも正しくそれを把握して適切な診療に結びつけるのも総合内科医のつとめだと考えます。そのためには他科の疾患や最新の診療内容の知識も必要になることも多いです。
このような総合診療の範疇に含まれる、比較的頻度の高い症状としては次のようなものがあります。
- 全身倦怠感(だるい・疲れやすい)、体温の異常、リンパ節腫脹、体重の大きな増減、発汗の異常
- 意識障害、失神、記憶の障害、めまい、視覚の異常(視力障害・複視)、聴覚の異常
- 嚥下の異常、構語の異常、失語、麻痺、筋力低下、振戦(ふるえ)、運動失調
- 頭痛
- 動悸、脈拍異常、呼吸困難、胸痛、背部痛、腰痛
- 嘔気・嘔吐、食欲不振、腹痛、便通異常
- 排尿障害、尿量の異常、血尿
- 関節腫脹・関節痛、皮疹・発疹、かゆみ、浮腫(むくみ)
これらの全てが必ずしも病気というわけではないのですが、医師のつとめとして重篤な疾患や見逃してはいけない疾患を念頭に、鑑別を進めるということになります。
この総合診療の範疇で、もうひとつ求められているのが高齢の方についての正しい病態把握と問題解決です。高齢者医療とか老年病学などと表現されることもあります。
加齢に伴う身体の変化や不調、複数の病気をお持ちの方での諸注意、おひとりおひとりの生活に根ざした治療法の選択、認知症にまつわる諸々のこと、等々、教科書通りの一般内科学の延長では必ずしも適応できないさまざまな問題への対処が求められます。
高齢の方の検査値異常への理解、多剤併用に対する注意や薬剤整理・副作用の早期発見と是正、認知機能の把握と御家族への助言、地域医療システムとの連携など、身近な医者としての役割がとても大きいと感じています。
西洋医学的なアプローチでは異常なしとされるようないくつかの身体的な問題に対しては、漢方薬の助けを借りることが多く、近隣の薬局さんの協力をいただきながら70種類ぐらいの漢方薬を症状に応じて使っています。
そしてもうひとつが、がんの治療を行っている患者さんがたへの診断・治療・ケアです。スクリーニングと早期発見は常にこころがけており、検診などの精度を上げるべく努力しています。がんの治療そのものは専門病院で行われることが多いですが、患者さんには全人的なケアが必要であり、なんでも相談できる便利な町医者として当院を使っていただいています。こちらの面でも漢方薬の助けを借りることが多いです。
